■「尼崎は醤油の名産地」−現在の尼崎しか知らない人々には信じられないような話ですが、明治から大正にかけての尼崎で「醤油」は重要な産物の一つであり、また広く知られた存在でした。
当時、尼崎の醤油は「尼の生揚」と呼ばれ、独特のウマ味と高い香気を持つ優れたもので、川辺郡誌にも「・・・色澤、芳香、醸味共に其度に適し、龍野、小豆島の間に介在して関西醤油の醇良と称へらる・・・」と記されています。
■「尼の生揚」は「寒」に仕込み、愛染祭から土用にかけて搾汁する低温短期醸造で、さらにぎりぎりの食塩分での仕込み。この何でもないことが、実は醸造に最適の条件であることを彼らは身をもって学びとっていたのです。驚嘆というほかありません。
■尼崎の醤油産業は「舟弁慶」で名高い、義経と静御前が別離の悲運に泣いたという大物ヶ浦あたりで興ったといわれます。
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